小さな豆腐屋を守る
バランスをこわすのは料理法ばかりではない。例えば、豆腐を例にとってみよう。小さな豆腐屋で買ってきた豆腐も、スーパーで買ってきた豆腐も、一見同じものに見えるかもしれない。見かけだけでなく、食べてみた味も大差ないとして、神経質にいいたてることをむしろ、病的という主婦もいるだろう。だが、その差は看過すべき程度をはるかに超えているのである。
小さな豆腐屋でつくられている家内生産的な豆腐にふくまれるカルシウムとリンの比率は、ほぼ1対1という正常なバランスになっている。ところが大きな機械設備による大量生産の豆腐は、カルシウム1対リン3以上という異常な比率になっているのである。
そういう食品を食べていたのでは、食事のバランスは崩れていくばかりなのだが、つぶれていくのはスーパーではなく、小さな豆腐屋のほうだ。われわれが栄養のバランスをとり戻そうとするとき、それは単に厨房のなかだけのことではなく、例えば小さな豆腐屋を守るという行動を伴わなくてはならない時代にきているのである
文/『いま、家庭料理をとりもどすには』 中央公論社 より
もう20年くらい前になりますが、弟と二人で飲んでいて...
「あの『小さな豆腐屋をまもらなければいかん』って話読んだ?」
「読んだ、読んだ!ああいう発想ってすごいよね。」
と愉快に話したことを思い出します。